宮城県南三陸町で開催した「豊かな自然・人・社会を未来へつなぐシンポジウム」の実施報告

アミタグループは 南三陸町や環境省などと、 2016年4月9日(土)・10日(日)、宮城県南三陸町で「豊かな自然・人・社会を未来へつなぐシンポジウム 南三陸から世界へ。~持続可能な地域づくりへの挑戦~(以下、本イベント)を開催しました。2日間の日程でシンポジウムと現地見学ツアーを行い、全国各地から約160名の方にご参加いただきました。人と自然が共生する循環型社会について登壇者・参加者との間で自由闊達に意見交換され、未来を創っていくのは自分たちであり、ここから未来を変えていこう!という意識が共有された熱気のあるイベントとなりました。

本イベントは、環境省の「つなげよう、支えよう森里川海」プロジェクトと連携して開催しました。

160409_Symposium_1.jpg※シンポジウム終了後の集合写真

イベントの概要

日付 プログラム概要 参加者数


4月9日(土)
【シンポジウム】 13:30~17:30
第1部  トークリレー『人と自然の共生から生まれる循環』
第2部  トークセッション『南三陸町から未来につなぐ』
152名
【交流会】 18:00~20:00 66名
4月10日(日) 【現地見学ツアー】 9:30~15:30 50名

※本イベントの詳細プログラムや登壇者などは関連リリースをご覧ください

1日目:シンポジウム報告

第1部  トークリレー『人と自然の共生から生まれる循環』

国(環境省)・自治体(南三陸町)・事業者(アミタ)が、それぞれの立場で推進する豊かな自然・人・社会を結ぶ連環のしくみづくりについて、その構築の過程や将来像などが話され、有識者や会場との意見交換も交えながら、目指す方向性が会場全体に共有されました。

<ご講演趣旨抜粋>

160409_Symposium_2.jpg環境省大臣官房審議官 中井 徳太郎 氏

  • 「循環型の社会を構築するには、ライフスタイルと社会システムと技術、3つのイノベーションが必要。」
  • 「今の社会は、昔に貯めた元本を切り崩して食いつぶしているような状態。私たちの共有資産である自然は、食いつぶしてしまえば残らない。丁寧に育てストックしていく社会のしくみを構築したい。」
  • 「今は時代の転換期。矛盾する動きや多少の混乱があちこちにある。それでも腹を据えて、やれることをやることが必要。」

南三陸町長 佐藤 仁 氏

  • 「大事なことは、行政として明確に方向性を出すということ。やれるか、やれないか、という事よりも、明確に行政の指針をまず持つことが必要だった。その結果、知恵を持つ様々な人が集まり、具体的なプランが見えてきた。」
  • 「行政の役割、民の役割、企業の役割などが一つになり、具体的な街全体の方向性が形になった。」
  • 「自然と共生するまちづくりを実現する方法が、エコタウンへの挑戦、バイオマス産業都市構想になった。」

アミタグループ代表 熊野 英介

  • 「人間は素晴らしい。強い生命力こそが未来を創る。あきらめない、ということが命のDNAだと思う。」
  • 「今後温暖化や異常気象で困難に直面する島嶼(しょ)国や、今もまだ衛生的なトイレが整備されていない地域、また焼却炉やし尿処理施設の老朽化の課題を抱える日本の多くの地域が、南三陸で構築される循環モデルを必要とする。」
  • 「循環とは次のことを考えて行動すること。循環が世界中に広がれば、戦争もなくなるはず。」

特別講演『パラオの現状と次世代に向けた取り組み』

<ご講演内容趣旨抜粋>

パラオ共和国コロール州廃棄物管理事務所長Selby Etibek 氏

  • 「パラオは南三陸町と同じく島まるごとの包括的資源循環モデルを目指している。」
  • 「島国であり廃棄物の埋立地も限られ、また処理技術・コストなど廃棄物問題が深刻化している。」
  • 「南三陸モデルはまさにパラオが目指す循環モデル。現在アミタと一緒にパラオでの計画を立てている。」


第2部  トークセッション『南三陸町から未来につなぐ』

160409_Symposium_3.jpg国際認証を取得した漁業・林業関係者の他、地元の農業家、市民活動家、バイオガス施設運営者など、南三陸町のまちづくりに現場で携わる「未来開拓者」たちによるトークセッションが繰り広げられました。南三陸復興の5年間が詰まったリアルな語り合いにより、会場が熱気に包まれました。
※写真はトークセッションの様子

<セッション内容抜粋(登壇順)>

地元の未来を語る市民会議代表(工藤 真弓 氏) 

  • 「子供に自然と触れ合う原体験をどう残すか。震災後、バスで通学している子供たちは、登下校中に木の実や昆虫などと触れ合う大事な機会を失っている。大人にできることをやっていきたい。」
  • 「震災前は活動がうまくいかない原因を考えていたが、震災を経験してそういう考えは消えた。うまくいかないことがあっても、やってみる、やっていくこと。」

地元農家(阿部 博之 氏)

  • 「震災前から、農薬や化学肥料を使う農業・農法でいいのか、という疑問はあったが、一定の収穫を得られるようになるまでに長い時間がかかる有機農業に挑戦するだけの想いはなかった。」
  • 「震災後、近代農法前に流行ったササニシキを、当時の農法に近いやり方で無農薬栽培することを薦められ、腹をくくった。」
  • 「恐怖はあったが、挑戦して分かったことがたくさんある。米も野菜も、自然の本来の力で育つのがいいに決まっている。」

地元林業家(佐藤 太一 氏)

  • 「地震でも津波でも山は残った。これは町全体の財産だとその価値に改めて気が付いた。そして、人間も森の所有者でなく自然の一部にすぎないんだと思った。」
  • 「震災前に認証取得を諦めかけたこともあったが、本当に価値ある森を正しく評価してもらうためには必要な手段だと思った。FSC®で先進国らしい適切な林業を広めていきたい。」

地元漁師(後藤 清広 氏) 

  • 「震災を経験して、自然は戦うものじゃない、活かすものだと気が付いた。」
  • 「牡蠣のことをよく知っているつもりで、実は知らないことがたくさんあった。震災後、多くの人に教えられた。」
  • 「過密養殖をやめて生産量を減らすのは怖かったが、結果、3年分の収穫量が1年で実現し、市場の評価も上がった。」
  • 「震災があって、"不便=不幸"じゃない、"お金がある=豊かな生活"じゃないと気が付いた。」

バイオガス施設運営者(櫛田 豊久)

  • 「南三陸BIOは、単なるハードではない。町民も農家も関わる循環のシステム。関係者皆の主体性が大事。」
  • 「現在、生ごみへの異物混入率は1%以下。これは全国的にも素晴らしい数字。」
  • 「百の論より一つの証拠をつくりたい。"やればできる"を証明したいと思い、ここまでやってきた。」

場所文化フォーラム名誉理事(吉澤 保幸 氏)

  • 「確かな未来は懐かしい過去にある。」
  • 「誇り、プライドをどう作るか。そこには楽しさも必要。」
  • 「変革は自分の中にある。命は未来のためにある。そして、つながっていくことが大事。」


シンポジウム参加者の声抜粋

  • ASCやFSC®も無農薬も、町民他消費者がそれを選択しないと社会は動かない。そのためにはこうした取り組みにもっと町民が興味を持って、知ることができる場をつくっていかなくちゃいけない!!(20代 町内団体員)
  • これからの南三陸の可能性や工藤真弓さんの子供たちに対する思いを聞いて、私も今入っている高校生団体で南三陸のため、子供たちのためにこれからも活動していきたいと思いました。(10代 町内高校生)
  • 地元の方々の多さに驚く。それぞれの生き方に皆さん関心があるのだと思いました。海は、自然は、大切な友である。自然に対する挑戦に改めて意欲を感じる。(50代 漁業関係者)
  • 地元が世界レベルで誇れる町になりつつあることが非常に嬉しい。自分もその輪に入って頑張りたい。(20代 南三陸町民)
  • バイオガス施設については、広域化・大規模化が必要であり常識と考えていた。しかし今回のシンポジウムで資源となる生ごみを排出する方々の顔が見える程度の規模がよい、地域の資源循環が成功するとのご意見には感心した。(40代 プラントメーカー)

1日目:交流会報告

160409_Symposium_4.jpgシンポジウム登壇者や参加者、そして地元住民の方々との交流会が行われました。ざっくばらんな意見が会場の随所で自由闊達に交わされ、またシンポジウムで特に印象に残ったキーワードを共有し合うことで、南三陸の地で自然も人も豊かな社会モデルを構築し、世界に向けて発信していく重要性が改めて確認されました。

※写真はシンポジウムで印象に残ったキーワードをヒアリングし、書きだしたもの

2日目:現地見学ツアー報告

160409_Symposium_5.jpg日本初のASC養殖場認証を取得した戸倉漁協のカキ養殖場(志津川湾内)、2015年10月から稼働したバイオガス発電施設「南三陸BIO」、 FSC®森林認証を取得した南三陸杉の森などを見学しました。南三陸町の豊かな森・里・川・海の中で進む新しいまちづくりについて、携わる人間の生の声を聴き、取り組みの現場を「感じる」、貴重な機会となりました。また、途中旧防災庁舎前の献花台に立ち寄り、参加者全員で花束とともに哀悼を捧げました。

現地見学ツアー参加者の声

  • 創造的でかつ環境に配慮した取り組みが本当に進んでおり、頼もしい想いがした。
  • 南三陸という土地が天然の分水嶺に囲まれていることが、ツアーの中でよく分かった。土地柄から来る自立への意識や復興の中で浸透した当事者意識が、今の南三陸の取り組みを支えていると思う。
  • 南三陸は復興を目指す被災地でも、別格の動きをしていると感じた。
  • リアルな現場が見られて本当に勉強になった。生の声を聞いてその場に立たないとわからないことがある。

160409_Symposium_6.jpg※南三陸BIOでの集合写真

アミタのこれまでの南三陸での主な動き

2011年4月 :震災の被災地支援、「ひと・つながり募金」を実施
2011年7月 :アミタグループ東北オフィス(仙台市)の開設
2012年3月 :アミタホールディングス株式会社、南三陸オフィス開設
2012年6月 :「木質バイオマスエネルギーに係る実証調査業務」を受託
2012年8月 :NTTドコモと連携した震災復興事業「未来の種PJ」開始
2012年11月:バイオガス施設と可燃ごみ資源化施設等の実証実験開始(環境省委託事業)
2014年7月 :バイオガス事業の実施協定を南三陸町と締結
2015年4月 :バイオガス施設から製造されるメタン発酵液肥の公開散布会を実施
2015年7月 :南三陸森林管理協議会が管理する森林のFSC®森林認証審査を宮城県で初めて実施
2015年10月:バイオガス施設南三陸BIO開所
2015年11月:日本初となる環境と社会に配慮した国際的養殖認証「ASC養殖場認証」の審査実施
2015年11月:FSC®認証取得者(FM認証・COC認証)への認証伝達式が開催
2015年12月:「ASC COC認証」についての説明会を、宮城県南三陸町で開催
2016年2月:アミタ(株)、宮城県再生可能エネルギー等・省エネルギー大賞 再生可能エネルギー等導入促進部門の優秀賞を受賞
2016年3月:宮城県漁業協同組合のカキ養殖業に対し、ASC養殖場認証を発行

【お問い合わせ】
 アミタホールディングス株式会社 経営戦略グループ 共感資本チーム 担当:井口・岩藤
 電話:075-277-0795(直通)/ メール:press@amita-net.co.jp
 ファックス:075-255-4527 / URL:http://www.amita-hd.co.jp/

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