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会長・熊野の啐啄同時

アミタホールディングス株式会社の代表取締役会長兼社長である熊野英介のメッセージを、2ヶ月に1回、動画やテキストで掲載しています。



第2回「近代の誤作動-② 近代から現代」

連載第2回は、人間の尊厳を守るために構築された国民国家である近代システムがなぜ崩壊し、誤作動を起こすのかについてお伝えします。

二度の世界大戦

18世紀は、まだ中世と近代が混在していた時代でした。近代システムである国民国家を目指す国々が、中世的システムである帝国と覇権を争っていました。各国は権力を既得権化するために集団的自衛権を結び、国際情勢は二極化していきました。明治維新により近代化した日本に日露戦争で敗戦した後、ロシアでは世界初の社会主義革命が興こり、社会主義国家が誕生しました。

私有財産の獲得をエネルギーとしたフランスの市民革命と違い、ロシアの社会主義革命は私有財産を否定し、財産の平等分配をエネルギーにしました。この革命は欧州の帝国主義国に衝撃を与え、共産主義・社会主義革命との対立で、帝国主義をより一層発展させました。欧州帝国主義国は資本主義を維持し、税金で工業化や植民地化を進め、軍事・政治・経済は相乗的に膨張を始めました。そして、セルビアとオーストリアの小さな衝突から、第一次世界大戦に発展していったのです。

人間がこのように悲惨な世界大戦を起こすとは、当時誰も想像していなかったでしょう。産業革命後の発展で産業資本家が国家に影響力を与えるまでになり、人類は科学力を殺人目的の武器(戦車・戦艦・毒ガスなど)に転用したのです。原理主義的な正義(愛国主義)は、天使をいつでも悪魔にしてしまうことを人類は知りました。

国民国家建設という近代の理想は「人間の尊厳を守る」ことでした。しかし、この世界大戦で近代の理想は終焉し、「強い国家が豊かになる」という富国強兵競争と近代的帝国主義が加速していきました。基盤となる資本主義も進化し、工業化社会を加速させました。そして、カーネギーやロックフェラーのような個人産業資本家が近代の王になっていったのです。各国で罰金制度が導入され、経済的優位者が法の下でも優位になり、法の下に平等であった近代の理想は崩れていきました。第一次世界大戦は、世界の覇権国で戦争の規模やルールを大きくかえるきっかけになったのです。

第一次世界大戦後の1929年に起きた世界大恐慌は、社会を停滞させました。しかし、世界的経済の停滞は行き過ぎた資本主義の否定になりました。先進国は不安から安寧な社会を求め始め、国家共同体ともいえるファシズム(国家社会主義)が台頭しました。ここにイタリア・ドイツを中心とするファシズム対、イギリス・フランスを中心とする資本主義の新しい二極化が生まれ、第二次世界大戦に突入することになったのです。第一次世界大戦までは軍隊と軍隊の戦いでしたが、第二次世界大戦になると都市を破壊し、市民を巻き込む戦争になりました。国家の正義のために市民社会が破壊されたのです。

第二次世界大戦後 現代の夜明け

世界大恐慌と二度の世界大戦で経済的・社会的にも傷ついた世界は、企業の力での回復を目指し、市場経済を利用した企業組織の時代が始まりました。企業は軍需産業の民生転用で市場経済を大きく発展させましたが、大量生産・大量消費時代の行き過ぎた工業は、主に先進国で1970年前後に大規模な公害を引き起こしたのです。その後、環境技術が公害問題を克服していきますが、潜在的な環境リスクを顕在化させる環境保護法により、違反すれば罰金という新しい市場が生まれます。大量生産のメカニズムは制限されることなく、大量消費時代が続きます。その結果、地球温暖化問題を発生させたのです。1980年代になり天候不順が続き、世界初の損害保険会社ロイズが保障しきれないほどのリスクが発生し、その存続を危うくしました。その後、1987年にモントリオール議定書で科学的根拠がなくても未来のリスクを予防する「予防原則」が明記され、社会学的要素の時代に突入します。

そして同じく1987年に起きたブラックマンデー(株価大暴落)以降、金融商品が発達しました。実体経済でなく貨幣経済市場を発展させ、「予防原則」という不安を購買行動に変えていきました。同時期に国際連合は「環境と開発に関する世界委員会」(通称ブルントラント委員会)を設立して持続可能な開発を提案し、1992年にリオデジャネイロで開催された地球サミットでは、環境と開発の問題を同時に解決するために、冷戦後の新秩序を構築する模索が始まりました。

しかし、冷戦後は政治も経済も将来の不安を煽り、国民の安心に対する欲求を増幅させ購買・出資・投票行動に結びつけることで発展しています。人々の不安を煽り、政治や経済をコントロールしようとする社会は不健全で不幸です。経済学者のシュンペーターは「資本主義は、成功すればするほど失敗する。」(なぜなら、資本主義で成功した資本家は既得権益を守ろうとするので、変化を好まないので、社会主義化するという意味)と警告を発しています。

近代の誤作動が起こす諸問題と課題先進国日本の現状

近代の誤作動とは市民が市民のために市民社会を作るという共和精神が形骸化したために起きたものです。自然と人間をコストにする工業化社会の行き過ぎによって、物質的豊かさの獲得という、個人主義的な価値観が主流になったことが誤作動の原因です。この近代の誤作動は世界の至るところで起きています。中でも日本は課題先進国として近代システムの問題が露呈しています。(※いくつかの例は後述の参考をご参照ください。)

現在の日本では、かつて安全・安心を担保してきた様々な社会システムの信頼が劣化・崩壊しています。しかし、もし日本が崩壊した社会システムを再構築し、信頼を構築することができれば、それは世界が直面している課題、つまり現代文明が抱える諸問題の解決策につながり、新しい文明の始まりになると思います。それは、持続可能な新しいシステムの始まりといえます。

近代システムを構築した市民革命は、「法の下の平等」により「人間の尊厳を守る」革命でした。しかし、個人が損害賠償を証明しなければ法の効力はなく、将来発生するだろうリスクには無力です。例えば、地球環境問題や平和問題のような将来損害予想は法の対象外なのです。また、現在工業・金融の資本が増幅すればするほど、生命の尊厳が失われています。

人間の尊厳を守る革命により生まれた近代は、「人間がコストになる」という矛盾、「法の下に平等でも持続不可能になる」という矛盾を内包しながら、工業・金融資本を増幅させるいきすぎた状態を作り、その結果、社会に誤作動を引き起こすシステムを産みだしてしまいました。では、そのいきすぎた根本原因はなんなのでしょうか?

そろそろ、新しい価値観を作る、新しい時代になってきました。



2017年3月10日
アミタホールディングス株式会社
代表取締役会長兼社長 熊野英介



参考|近代システムの誤作動と課題先進国日本の事例

近代システムがもたらす誤作動の例 日本の課題事例
経済
  • 実体経済を翻弄するグローバル金融経済
  • 既得権益者に益々富が集中する格差問題
  • 先進国の赤字国家財政
  • 消費低迷による製造業の市場縮小
  • OECDの中でシングルマザーファーザーが最低レベルの所得
  • エネルギー・資源・食料の低自給率
政治・社会
  • 既得権益の破壊を試みる新右翼や新左翼勢力の台頭
  • 中東やアフリカで始まっている難民問題
  • 新帝国主義活動の中国やロシアの覇権争い
  • 核エネルギーのアンコントロール・核拡散
  • 麻薬やギャンブルなどの依存症
  • 縮退(スポンジ化)する地域コミュニティ
  • 超高齢化社会の社会保障と年金制度の破綻
  • 初中等教育の学力低下・学校でのいじめ、若者の自殺の深刻化
  • 国立大学法人化後の高等教育の混乱と研究力の低下
  • 第二次世界大戦後に整備した社会インフラの老朽化
環境
  • 地球温暖化などの気候変動や環境破壊による生態系変化
  • 新しい病原菌や免疫力を持つ害虫の増加
  • 原発破綻・核燃料のゴミ処理・廃炉の問題
  • 深山里山の放置による獣害増加と土砂崩れなどの治水問題
  • アレルギーや免疫疾患の増加
  • 福島原発問題など

「啐啄同時」に対するご意見・ご感想をお待ちしております。
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■2017年新連載「新しい時代-new era- ~Innovation3.0~」

■これまでの会長メッセージ


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※2013年3月11日より、会長・熊野の思考と哲学を綴った『思考するカンパニー』(増補版)が、電子書籍で公開されています。ぜひ、ご覧ください。

※啐啄同時(そったくどうじ)とは

鳥の卵が孵化するときに、雛が内側から殻をつつくことを「啐(そつ)」といい、これに応じて、母鳥が外から殻をつついて助けることを「啄(たく)」という。雛と母鳥が力を合わせ、卵の殻を破り誕生となる。この共同作業を啐啄といい、転じて「機を得て両者が応じあうこと」、「逸してはならない好機」を意味するようになった。

このコラムの名称は、未来の子どもたちの尊厳を守るという意思を持って未来から現代に向けて私たちが「啐」をし、現代から未来に向けて志ある社会が「啄」をすることで、持続可能社会が実現される、ということを表現しています。