「創資源」宣言(2013年7月11日掲載)
アミタホールディングス株式会社の代表取締役会長兼社長である熊野英介のメッセージを、2ヶ月に1回、動画やテキストで掲載しています。
「創資源」宣言
(2013年7月11日掲載)
アミタが「What is Value?」価値とは何か?を問い続けて、今年で36年目になります。創業以来、廃棄物や荒廃した森林など、価値が無いと思われ活用されていない様々なものに価値を見出し、利活用することを事業としてきました。
未利用資源を創意工夫によって価値あるものに変える智慧は、日本文化に古くから根付いているものと思います。例えば、誰もが知っている「バッテラ昆布」 も、元々は製造品ではありません。昆布をおぼろ昆布として削れなくなる程まで削った残り(芯の部分)がこの「バッテラ昆布」になり、さば寿司に付加価値を つけました。
また、江戸時代の豪商の河村瑞賢は、13歳の時に伊勢から当時の新興都市であった江戸に成功を夢見て出てきましたが、20 歳頃までは仕事も上手くいかず、あきらめて郷里に向かったそうです。その道中、お盆の精霊送りで品川付近の海岸に瓜や茄子が多数漂流しているのを発見しま した。そこで浮かんでいる瓜や茄子を拾い集め、塩漬けにしたところ、この漬物が評判となり、莫大な利益をあげました。これが「福神漬」の始まりと言われて います。当時、そのような瓜や茄子を食材にしようと考えるのは、非常識だったのです。漬物は購入するものではなく、自家製が常識でした。
河村瑞賢は、その成功に留まらず、次々と事業に挑戦をし、日本の物流網の整備として河川改修、港の整備、海運としての航路の開発など日本の近世経営者として成功しました。漬物を作るのも挑戦、土木工事も挑戦、航路開発も挑戦し続けました。最後まで、彼は未完の挑戦者だったと思います。
こうした、価値の無いものに価値をつける創造力は非常に大事です。本来の人間力を感じます。特別な知識や卓抜した技術力や多額の資本力を持つ者にしか、創造力が発揮できないと決めつけるのは、工業化社会の悪しき価値観かもしれません。
我々が資源リサイクルを始めた時は、環境産業と言えば"廃棄物処理業"と"環境プラント業"と"廃品やスクラップのリサイクル業"でした。産業活動や生活 活動から発生する廃棄物の成分を分析し、リサイクルして地上の資源として地下資源のように安定供給する仕組みを作るという「資源化市場」は、空白でした。 特別な知識も卓抜した技術も多額の資本力もない、平均27歳の若者達が、ただ「もったいない!」という社会的動機で行動した結果、我々アミタは空白だった市場を開拓できたのです。
創造力の「創」という漢字は、絆創膏(ばんそうこう)という言葉があるように「傷」を意味します。樹木に傷をつけたら、樹液が新しい組織に修復するように、古い価値観を剥がすように傷を付け、新しい価値を生み出すことが「創造」です。
新しい資源(価値)は、世間の常識に傷をつけ、自分の先入観に傷をつけ、組織の頑迷に傷をつけてこそ生まれるものだと思います。
そして、人間誰しもが持っている"利他的本能"を集約する情熱と、その情熱を支え合う仲間が集まれば、創造力は持続し、形になっていきます。我々は今、廃棄物の資源化に留まらず、自然・生活・社会といった、あらゆる地上の未活用資源の利活用へと、挑戦の翼を広げています。アミタグループは、再生可能エネルギーや再生可能資源だけでなく、耕作放棄地などの空間や障がい者、シニア世代の社会参加までも視野に入れた、持続可能社会の構築のための「創資源」宣言をします。
「近代文明は、孤独や孤立を生み出す装置に成りつつあるのでは無いか?」
そんな社会にしないよう、気付いた者から創資源の挑戦を実行し、社会全体が価値を増幅していくことができれば。今なら間に合うと思います。
2013年7月11日
アミタホールディングス株式会社
代表取締役会長兼社長 熊野英介
会長メッセージ
※2013年3月11日より、会長・熊野の思考と哲学を綴った『思考するカンパニー』(増補版)が、電子書籍で公開されています。ぜひ、ご覧ください。
※啐啄同時(そったくどうじ)とは
鳥の卵が孵化するときに、雛が内側から殻をつつくことを「啐(そつ)」といい、これに応じて、母鳥が外から殻をつついて助けることを「啄(たく)」という。 雛と母鳥が力を合わせ、卵の殻を破り誕生となる。この共同作業を啐啄といい、転じて「機を得て両者が応じあうこと」、「逸してはならない好機」を意味する ようになった。このコラムの名称は、未来の子どもたちの尊厳を守るという意思を持って未来から現代に向けて私たちが「啐」をし、現代から未来に向けて志ある社会が「啄」をすることで、持続可能社会が実現される、ということを表現しています。