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第3回:市場のイノベーション ―「サービス化する経済」―(2018年7月11日)

2018年度啐啄同時は「共感の時代-信頼が資本になる社会-」をテーマに、新しい時代の価値観や企業に必要なイノベーション力について連載します。



第3回:市場のイノベーション ―「サービス化する経済」―

共感の時代におけるイノベーションをテーマにした連載、第1回は「組織のイノベーション」として組織は孤独から仲間を守るシェルターへ変化すべきだと述べました。前回の第2回は「商品のイノベーション」として、顕在化していない社会ニーズを満たす「関係性」を価値観に持つ商品を生み出し提供することが重要だと述べました。

さて今回は、「市場のイノベーション」がテーマです。
産業革命以降、世界人口は急速に増加し続けています。産業革命時には世界人口は約7~8億人ほどだったのが、現在では約76億人になろうとしています。特に、先進国の増加は凄まじく、日本においても明治維新以降に近代化という名の工業化で150年間に1億人が増加し、戦後も、軍需産業が民生化され、本格的に工業化社会が始まり、2003年から2004年をピークに約5,500万人が増加しました。しかし、そのピークを境に日本の人口は減少しています。そして人口収縮期を迎えている現在、"含み資産"と呼ばれていた土地や株式そのものの価値が下がり、むしろ"含み負債"に変わってきたのです。近代の成長企業の象徴であった"含み資産"経営は終焉を迎えているといえます。

同時に、消費や所有拡大が停滞した現代の国内市場においては、従来の「大量生産が生み出した大量消費の市場を前提にしたマーケットリサーチ、すなわち顕在化した市場からニーズを分析して、マーケットインという手法で商品開発をしていく」というだけでは、収益を上げ続けることが難しくなっています。
つまり企業経営において、これまで常識と思われていた既存の手法が通用しなくなりつつあるのです。
このような時代に、企業はどのように成長路線のビジネスモデルを構築しうるのでしょうか?

この問いの答えが、サービス化する経済だと思います。
それは単純に「モノからコトへ」サービス化するという意味ではありません。
潜在的な人々のニーズを顕在化させる、あるいは持続可能社会の実現という人類共通目標の達成という社会的共感性を発現させる商品を提供する、新たな"サービス化した産業"が求められているということです。
そしてこのような産業(社会的課題解決のために今までの産業を統合した産業=持続可能社会産業)が主産業となる市場、つまり「社会の基盤」を創出しなければなりません。
そう、今こそ「市場のイノベーション」が求められています。

では、今回のテーマとなる「市場のイノベーション」について深堀していきましょう。
「市場」とは、商品としての財貨やサービスが交換され、売買がされる所と定義されています。
従来の市場は単純に、店舗の規模を拡大することや、顧客の滞在時間や来店頻度を向上させることで、拡大していきました。
しかし、インターネットの普及により、電子取引という物理的な場所を要しない市場が登場しました。これにより、1人の顧客に対して複数の市場が同時に存在するようになると同時に、顧客が売り手になることも可能になりました。
市場においては

  1. 市場の変化が加速しました。
  2. 大量生産・大量消費モデルとのシナジーにより、物・サービスがますます溢れるようになりました。
  3. 地理的・時間的条件に縛られない不特定多数の顧客が出入りするようになりました。

このような市場では人々のニーズは絶えず変化し続けるものとして顕在化しています。これらは一見、規則性を持たない不連続なもののように思えますが、実際には一定の秩序を保ち続けながら連続しています。この絶えず変化し続けるニーズを微分し(個人の潜在的なニーズの変数=要素を捉え)、抽出し、最適解を導き出すことが、すなわち「売れる商品」を生み出すこととなります。これを実現することが出来れば、企業は、"不連続な連続"である潜在的なニーズを積分した(変数=要素を無限に足し合わせた)新しい市場を生み出すことが可能です。

これは「マーケットイン」(消費者のニーズに基づいた企画開発)に代わる「マインドイン」(個人の潜在的なニーズを顕在化させる企画開発)ともいえる、新たな手法です。

では、このマインドインを成功させるために、企業は具体的にどのように取り組めばよいのでしょうか?
以下の経営視点がヒントになると思います。

  • 自己組織化

企業は、絶えず変化し続ける市場を微分し、最適解を提供し続けうるフォーメーションを求められています。例えば、自然界の生物は、長い地球の歴史の中で変化する自然界で生き残るために、その形態や能力を変化・適応させながら、進化してきました。企業も、外部状況に依存せず、「動的平衡」を保つように絶え間なく変化する外部から学びを取り入れ、自律的に秩序を編み直す組織であること(自己組織化)が必要となります。

  • オープンイノベーション

社内資源に依存せず、あらゆる枠組みを超えて知恵や人材を外部から取り入れることは、新たな経営資源の導入としてのみならず、内部の未利用な価値の発見にも繋がります。
これは、従来から行われてきた異業種間や大企業とベンチャー企業との協働にとどまらず、例えば「初音ミク」等の音声合成ソフトウェアが著作権を一部開放することで多くのファンを獲得しているように、企業が持つ資産・財産の開放によっても、新しい市場を創出することが出来ます。
全く違う分野で活躍する企業が連携し合うことで、開発スピードが上がったり、自社のみでは開発できなかったサービス・商品の開発できるようになるとともに、取り入れた外部要素を事業活動や企業価値を積極的に社会に一体化させていくことで、社内にイノベーションが起き、新たな個性として組織文化や企業文化となり、人々の記憶に残っていきます。

  • 限界費用ゼロ

限界費用ゼロの可能性は、単純に、価格や経費を無料(タダ)にすることではありません。ある商品の購入に伴って、商品本来の使用用途以外の機能を無料で手に入れることができる仕様を指します。例えば、一般的な瓦の価格で購入できる太陽光発電機能が組み込まれた"ソーラーパネル付の瓦"のように、どうせ購入するならプラスアルファの機能がついた方を買おう、というものです。
ここに社会課題の解決機能を織り込むことで、社会課題をコストゼロで解決することが可能です。


そして、これからの時代は、特定顧客の持続的な購入を前提とした販売モデルを確立することが必要となります。すなわち、人々の「記憶」に残り続けること、「記憶」に残る商品や時間を提供することがポイントになります。したがって、商品の品質は素材(マテリアル)の品質以上に、その商品が持つ関係性(記憶)のトレーサビリティーが品質となり、この「記憶」の占有率が市場の占有率と比例していくと考えられます。

では、この「記憶」に残る商品を生み出すには、何がヒントになるのでしょうか?前回の連載、「商品のイノベーション」で触れた話を参考にしてみてください。
ここでは、物質的満足の飽和した現代社会において、人は「孤独の寂しさを解消する」ことを求めている、現代社会は社会問題の一番の原因である「孤独」を解放する商品やサービスを求めている、という話をしました。

かつて人類は、国が強くて裕福になれば、地域は幸せになると信じ、近代化を進めてきました。
もともと「country」という言葉は、『国』と『地域』の二つの意味があります。かつて人々は、国が強くて裕福になれば、地域は幸せになると信じていました。しかしその結果、存続の危うい地域が生まれると共に、"衣食住足りて不幸になる"という課題先進国に日本はなってしまいました。
同じように、「company」とは、『会社』と『仲間』の二つの意味があります。かつて人々は、会社が強くて裕福だったら、仲間は幸せになると信じていました。しかし短期的な利益追求を進めた結果、株主思考になり、ステークホルダーとの関係性の劣化を引き起こしてしまいました。

これからは、幸せな地域の総和としての「country」が、裕福な国を超える時代だと思います。
そして、幸せな仲間の総和としての「company」が、裕福な会社を超える期待を集め、ステークホルダーと良関係を増幅していく時代と思います。

冒頭でも触れた、株や土地といった有形性価値が含み資産の時代では、これらを担保に資金調達を行い、事業を拡大していく経営が主流でした。
これらの資産が人口減少により、"含み負債"となる時代においては、「共感」や「信頼」といった企業の持つ『良関係性』こそが、無形性の新しい"含み資産"となるでしょう。
このような経営シフトにおいては、"含み資産"としての『良関係性』が、実際の企業活動の担保になるかどうか、がポイントです。すなわち、『良関係性』の対象となる組織や地域住民といったステークホルダーが、その関係性に価値を感じていれば、その範囲内で出資・参画・利用という行動をとるはずです。そうなれば、"含み負債"となりつつあった土地や施設も、『良関係性』という無形性価値が入ることで、組織や地域の資金・労働・市場を安定させる新たな "含み資産"となります。

そして、この『良関係性』の構築は、商品の品質としての「記憶」のトレーサビリティーの創出に繋がります。このことは、地域(ローカル)経営の領域で考えると分かりやすいかもしれません。

地域の価値創出には、以下の経営視点が求められます。

  • 経営資本である人・モノ・金を地域外に流出させない
  • 地域内外の関係性の継続
  • 商品の関係性(人間と自然と社会活動等)トレーサビリティーが明確であること

実際、「記憶」が品質となる商品の登場により、経済は、スケールメリット重視の「量の経済」から、1つの基盤を多角的に運営することで、多種多様な商品やユーザーが出入りするプラットフォームを生成し、運営コストを下げつつ提供サービスの価値(質)を増幅させることで、利益率を向上させるスコープメリット重視の「質の経済」へシフトしていくでしょう。 

そして市場は、グローバルマーケットやマスマーケットから、ローカルマーケットを拠点に、これらが相互に連携するネットワークマーケットへと移行していくと思われます。
社会はこの経済の動きに伴って、中央集権型から自立分散型へと変化していくことが予想されます。

以上が、市場のイノベーションの本質と考えます。
これからは一次産業・二次産業・三次産業といったこれまでの産業を統合し、潜在的な人々のニーズを顕在化させた、新たな"サービス化した産業"が主産業、いわば「持続可能社会産業」が新たな市場を創出していくでしょう。

この市場は、SDGsやサーキュラーエコノミー、ESG投資などに表れている「持続可能社会」に向かう時代の追い風を受けつつ、社会的課題のソリューションを求める潜在的なニーズと同調し、「拡大」というよりむしろ「多層化」していくはずです。この中で、企業は「市場のイノベーション」に対応し、むしろ推し進める役割を担うことを求められているのです。

2018年7月11日
アミタホールディングス株式会社
代表取締役会長兼社長 熊野英介




「啐啄同時」に対するご意見・ご感想をお待ちしております。
下記フォームにて、皆様からのメッセージをお寄せください。
https://business.form-mailer.jp/fms/dddf219557820

会長メッセージ


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※2013年3月11日より、会長・熊野の思考と哲学を綴った『思考するカンパニー』(増補版)が、電子書籍で公開されています。ぜひ、ご覧ください。

※啐啄同時(そったくどうじ)とは

 鳥の卵が孵化するときに、雛が内側から殻をつつくことを「啐(そつ)」といい、これに応じて、母鳥が外から殻をつついて助けることを「啄(たく)」という。 雛と母鳥が力を合わせ、卵の殻を破り誕生となる。この共同作業を啐啄といい、転じて「機を得て両者が応じあうこと」、「逸してはならない好機」を意味する ようになった。

 このコラムの名称は、未来の子どもたちの尊厳を守るという意思を持って未来から現代に向けて私たちが「啐」をし、現代から未来に向けて志ある社会が「啄」をすることで、持続可能社会が実現される、ということを表現しています。