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「関係性」が未来を変える―価値づくり時代に向けて、個性・社会性を引き出す学びとは②

「生産性」から「関係性」が価値とされる時代へ

大竹さん:私たちの「学習療法」は脳科学的な効果が立証されているものですが、一番の効能は「信頼関係の構築」だと思っています。先ほどお話した通りコミュニケーションを通して、いわゆる三大介護(食事、排泄、入浴)だけではなかなか見えてこない、その方の人生、バックグランドが見えてくるんです。

すると、認知症を抱えるご本人と介護スタッフとの間に、心の繋がり、信頼のようなものが育まれていきます。
スタッフは認知症の方を一人の人間として尊敬し始めますし、認知症の方々は、笑顔や生きる喜び、尊厳を取り戻し始めます。

熊野:「子ども」や「シニア(高齢者)」という枠を外して一人の人間として接することで、信頼関係が育まれるんでしょうね。
「コスト」だけを重視していると、個別対応が難しくなってしまいます。社会全体が「生産性」を追求していった結果、経済的な貧困を抱えていない人であっても「どこか満たされない」という人が増えているように思います。

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渡辺さん:特に高齢者や子どもの問題は「生産性がないから」という理由で、社会的なコストを割いてこなかった領域かもしれません。しかし、ここを解決することは、社会を豊かにする上で実は非常に効果的なのではないでしょうか。

例えば、公園には「周囲に迷惑だから、大声を出してはいけません」といった注意書きがよくあります。その背景には、ご高齢の方が近所に住んでいて、家を出ることも少なく、孤独を感じていらっしゃる。そこに子どもたちの楽しそうな声が聞こえてくると、どうも癪にさわる...なんてケースも、あるだろうと思います。そうした時に「では公園で声を出さないようにしましょう」と単にルール化するのではなく、地域の関係性を育むことでも、問題を解消することができる。近所の人々も、子どもたちが大きくなっていく姿を近くで見ることに幸せを感じるようになると思います。


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大竹さん:信頼関係は、早期のリスク発見にも繋がります。学習療法センターに着任した当初、ある介護施設の施設長の方に「介護力とは何か?」と尋ねられました。その方の答えは「その施設のスタッフが"どれだけ気付き力"があるか」というものでした。その後、200以上の施設を回って、やっぱりそうだなと実感しました。

日頃からの信頼関係があれば、利用者の小さな変化にも気付きやすくなるんです。実際に「今日あの方は、少しだけろれつが回っていないのでは...」と感じたスタッフがいて、病院に連れてみると、脳梗塞が始まっていた、なんてこともありました。ご本人やご家族は「この若いスタッフさんのおかげで命を落とさなくてすんだ」と感動し、今度は施設との間に共感や信頼が生まれていきます。 そうしたレベルの気付きを想定すると、AIが人に代わるのにも限界があるように思います。

渡辺さん:「関係性」と一口に言っても、もちろん実際に築いていくのは簡単ではありません。 頭がいい人たちは「コミュニケーションはすぐにできるもの」という前提で考えがちですが...。

ずっと考えているのですが「子供たちを地域の高齢者が支える」という仕組みを増やしていけないかと。仕事で忙しい親の代わりに、九九を聞いてあげたり、お手紙をやり取りしたり、日記にコメントを入れるだけでも、子どもたちの学力の下支えになりますし、高齢者の生きる力にも繋がると思います。

大竹さん:介護施設でも、学習療法の教材に出てくる七輪やハエ取り紙の使い方といった昔の知恵を高齢者の方が若いスタッフに教えたりします。そうした「学び合い」の関係性の延長線上に、地域コミュニティの形を築くことができないか、と私もちょうど考えていました。

渡辺さん:「学び合い」の関係の、もう1つの良い点は「男性も参加しやすい」ということです。女性は地域をはじめコミュニティに参加しやすい一方、男性は引きこもりがちです。(笑)

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大竹さん:私たちの「脳の健康教室」やデイサービスでも、参加者の多くが女性です。特に企業の役職に就いていた男性なんかは、なかなか出てこないようです。私も、デイサービスで風船バレーをしているところなどを見るとつい「あれをやるのは、私はいやだな」と思ってしまいます。(笑)でも、学習療法の時間になると、男性の方も生き生きとされます。

熊野:「役割」がないと出てこない男性には「出番」をつくってあげることが、特に有効かもしれませんね。「自分は生きていていいんだ」という自己承認欲求を起点とする、人間の根っこにある「社会性」。これを動機とする行動を上手くデザインすることで「関係性の貧困」から「関係性の豊かさ」へシフトする。そんな仕組み創りが今、社会で求められていると思います。

大竹さん:誰もが互いに「私も人様のお役に立っている」、と想い合える社会をつくっていきたいものです。



<鼎談者>

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  • 大竹 洋司さん
    公文教育研究会 学習療法センター代表 

1982年公文数学研究会(当時)入社。1998年執行役員関東・東海ゾーンマネージャー、2000年日本公文教育研究会代表取締役社長、2008年公文教育研究会代表取締役副社長を経て、公文教育研究会学習療法センター代表に就任、現在に至る。

  • 渡辺 由美子さん
    特定非営利活動法人キッズドア理事長
    内閣府子供の貧困対策に関する有識者会議 構成員
    全国子どもの貧困・教育支援団体連絡協議会 副代表幹事

千葉大学出身。大手百貨店、出版社を経て、フリーランスのマーケティングプランナーとして活躍。配偶者の転勤に伴い1年間、家族でイギリスに移住し「社会全体で子どもを育てる」ことを体験。2007年任意団体キッズドアを立ち上げ、2009年に特定非営利活動法人化。日本の全ての子どもが夢と希望を持てる社会を目指し、活動を広げている。2018年初めての著書『子供の貧困~未来へつなぐためにできること~』(水曜社)を上梓。

  • 熊野 英介 :アミタホールディングス(株) 代表

「啐啄同時」に対するご意見・ご感想をお待ちしております。
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■2019年連載「信頼の世紀―微力なれども無力ではない―」

アミタホールディングス株式会社の代表取締役である熊野英介のメッセージを、動画やテキストで掲載しています。2019年度啐啄同時は「信頼の世紀―微力なれども無力ではない―」をテーマに、「誰一人取り残さない」持続可能な未来創造に取り組まれている方々との対談をお送りしてまいります。

これまでの「啐啄同時」一覧


■代表 熊野の書籍『思考するカンパニー』

2013年3月11日より、代表 熊野の思考と哲学を綴った『思考するカンパニー』(増補版)が、電子書籍で公開されています。ぜひ、ご覧ください。

※啐啄同時(そったくどうじ)とは

鳥の卵が孵化するときに、雛が内側から殻をつつくことを「啐(そつ)」といい、これに応じて、母鳥が外から殻をつついて助けることを「啄(たく)」という。雛と母鳥が力を合わせ、卵の殻を破り誕生となる。この共同作業を啐啄といい、転じて「機を得て両者が応じあうこと」、「逸してはならない好機」を意味するようになった。

このコラムの名称は、未来の子どもたちの尊厳を守るという意思を持って未来から現代に向けて私たちが「啐」をし、現代から未来に向けて志ある社会が「啄」をすることで、持続可能社会が実現される、ということを表現しています。